2023年8月6日日曜日

編み物

 昨年末に急に思い立って棒針編みを始めた。

百貨店の日用品コーナーを歩いていると、その一角にある手芸コーナーにカラフルな毛糸が陳列してあるのを見つけた。編み物は中学生の時に「選択家庭科」の授業で少し触ったきりだったが、楽しかった覚えがあったのでまたやってみることにした。

マフラー


まずはこちらの動画を参考にマフラーを一本編んだ。針はAmazonで10本セット15ユーロくらいで売っていた金属製の輪針を買った。道具が安いので初期投資が少なく気軽に始められるのも編み物のいいところだと思った。毛糸はウールで赤と青みのグレーのグラデーションの大玉を二玉買った。3週間位かけて2メートルくらいのマフラーが編み上がった。ウールでかつ長いので非常に暖かく実用的になった。音楽や動画を聞き流しながら無心で手を動かしているといつのまにかできているというのが良い。3Dプリンタになった気持ちになる。

はじめ(下)と終わり(上)で編み目の揃い具合がかなり違うのが見える。大昔に編み物をやったときは表編だけ(ガーター編み)しか練習しなかったので、裏編になれるまで時間がかかった。

道具一式。帰国中にユザワヤとかで買い足したクローバーの針は高かった。

帽子


せっかく輪針を買ったので、次はなにか筒状のものを、ということで帽子を編むつもりで毛糸を買ったのだが、金属の輪針(60cm)は帽子を編むには長すぎるということが判明し、急遽短い針(40cm)を買い足す羽目になった。これはよく考えれば当たり前なのだが、日常生活で「小が大を兼ねる」ことというのは少ないので実際に編み始めようとするまで気が付かなかった。




1つ目の帽子(青・小豆色)は、ワッチキャップとビーニーを混乱し、微妙に寸法を測り間違えたまま編み進めてしまったため、大きくなりすぎてしまった。

2つ目(黃・青)は、1つ目のデザインはほぼそのままで、寸法を小さくしたもの。上から下まで、表と裏を2目ずつ繰り返した2目ゴム編みにして、伸縮性を出している。また毛糸の切り替えにもチャレンジした。ウールで暖かい。2つ目以降の帽子は慣れてきたので週末2日ぐらいで編み上げることができた。

3つ目の帽子(白・緑)はもっぱら技工の練習としてアクリルの安い毛糸で作った。棒針で装飾をつける方法には、色の異なる複数の糸をドット絵のように使う「編み込み模様」と、編地そのものを立体的に交差させて形を作る「模様編み」という2つがあり、これを一つの帽子で両方練習することにした。ネットで見つけたノルディック模様の図案は、帽子の寸法と毛糸の太さ的に比べて大きすぎたので、自分でスプレッドシートを作って10目ちょっとでできる模様をデザインした。模様編みのパターンはこちらのサイトを参考にした。

編み込み模様をすると、2本以上の糸を使う関係で実質生地の暑さが倍になるため、出来上がりがかなり暖かくなる。

セーター


マフラー、帽子と来たらあとはセーターを編むしかない、ということでセーターに挑戦した。セーターには通常サイズの毛糸玉が15玉以上必要ということで、ちゃんとしたウールの糸(5ユーロくらいする)を使うとそのへんの服屋でセーターが2枚ぐらい買える値段になってしまう。正直最後まで根気が続くか自身がなかったので、今回は安いリサイクルコットンの毛糸で、春秋用(ないし最悪部屋着)のつもりで編んだ。途中で寸法ミスに気づいて大幅にほどく必要が出たのと、気候が暖かくなるにつれモチベーション維持が難しくなったせいで、結局完成には3ヶ月近く要した。ドイツ語でコットンはBaumwolleというそうで、「木綿」と語の作りが同じなのが面白い。コットンはウールやアクリルより糸が裂けやすく、かつ手の水分を吸うのでやや編むのに苦戦した。

今回は、首元から筒状に編んでいくトップダウンのラグランセーターという方式で編んだ。デザインはこちらのブログを参考にした。


筒状のものを組み合わせて服の形を作るということで、かなり反直感的な操作が多く、上にリンクを貼ったブログがどこの寸法の話をしているのか理解するのにかなり時間がかかった。簡単にトップダウン・ラグランセーターの構造を図解すると下のようになる(まさかこの記事を読んでセーターを編み始める人はいまいが):


まず第一に、トップダウン・ラグランセーターは「脇より上(黃)」「脇より下の身頃(マゼンタ)」「袖(シアン)」という3種類・4つの筒の組み合わせでできている(図a)。トップダウンなので、襟口からスタートして下に向かって増やし目をしつつ編み始める(黄色の円錐台を作る)。襟のリブの部分は後で逆向きに付け足す。脇まで来たら円錐台の底面に当たるところを3つの輪に分け、それぞれの輪をスタート地点として、身頃と袖の筒を作る。身頃は真っ直ぐな円柱に、袖は減らし目をしてすぼまる方向のテーパーをかける。

ただし、黄色の円錐台を最初から筒状に作ってしまうと、襟のところが前後対称になり、タートルネックを短くしたような状態になってしまう。いわゆる普通のクルーネックとかVネックのような襟ぐり(オレンジ部分)を作るためには、まず平たい台形(図b)を作り、これを輪にすることで図aのオレンジの線より上の部分を作る必要がある(編み物で引き算はできないので)。

ここで、もう一つ直感に反するのが、襟と脇を結ぶ八の字の「ラグラン線」が(この設計では)構造上袖と身頃の付け根になっていないということだ(布を縫い合わせてラグラン袖の服を作る場合は当然ここが縫い目になる)。ではこの設計のセーターにおいてラグラン線はなぜ生じるのかというと、それは黄色の円錐台を作る時に、毎段決まった4箇所で増し目をする(図c青矢印)のが、出来上がりで線として見えるようになっているのだ(なので、円錐台と呼んでいるものは実際には四角錐台のようになる)。構造上、どこで増し目をしても円錐台になるのはなるのだけれど、普通の目と増し目は見た目が違うので、こんな風に揃えてしまったほうが見てくれが良いということだと理解している。

所感


冬場実用的で、かつ簡単に進捗感が出る趣味として編み物を手に取ったが、思いの外クオリティの高い作品を作ることができたので、この冬も続けたい。今度は満を持してウールのセーターに取り組みたいのと、あとはたくさん作って困らない小物として靴下をやってもいいかなと思っている。







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