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聴いたもの(2022年9月〜2024年4月)

東京もさることながら、ネルソンスのBSO着任初シーズンに居合わせたボストン、学生と教授のコンサートがいつでもほぼ無料で聴けるニューヘイブンと、これまで色々豊かな音楽シーンのある都市に住んできたが、ミュンヘン・フィル(以下MPhil)、バイエルン放送交響楽団(以下BRSO)、バイエルン州立歌劇場(以下Staatsoper)を擁するミュンヘンはやはり別格と言わざるを得ない。書いておかないと忘れてしまってもったいないので、渡独一年半あまりの間に行くことのできたコンサートやオペラ公演をまとめておくことにした。

  • 9/22/2022 Lahav Shani / Seong-Jin Cho / MPhil
    ラヴェル:ピアノ協奏曲
    ベルリオーズ:幻想交響曲

    渡独して初めて聴きに行ったコンサート。特に幻想交響曲の前半楽章の弦楽器のサウンドに感動した覚えがある。ケチってクワイア席を取ってしまったが、ティンパニや木管楽器が頑張っているところを近くで見れたのは面白かった。MPhilの本拠地のガスタイクは改装工事中なので、MPhil・BRSOともに大編成のコンサートはイザールフィルハーモニーという仮設(?)ホールで行っている。もともと発電所の建物を部分的に再利用しているとかで(今も隣に発電所がある)、ホワイエ・ホールともに旧市街のホール群とは対照的なインダストリアルなデザインになっている。二回席前列は金網越しに舞台を見る形になるからかいつもお値打ちになっているが、どこからでもよく聴こえよく見えるいいホールだと思う。このとき幻想交響曲のEsクラリネットを吹いていた人によるシャニへの(首席指揮者就任決定に際しての)インタビューが23−24のシーズンパンフレットに載っていた。




  • 10/9/2022 Stefano Montarini / Staatsoper
    ロッシーニ:『チェネレントラ』 

    特に読み替えなどもないトラッドな演出で、良くも悪くも普通のロッシーニのブッファという印象だった。ロックダウン中にオンラインでオペラを見始めて、メトロポリタンが再開する前にアメリカを去ってしまったので、また世界有数のオペラハウスに気軽に足を運べる環境になったのが嬉しい。22−23シーズンで創立500周年(!)のバイエルン州立歌劇場は、メアリー・カサットの絵に描かれているような馬蹄形で背の高い劇場で、ロビーにもシャンデリアなどが吊るしてあり宮殿顔負け(というかもともと宮廷劇場なので、宮殿に隣接している)。スーツやドレスで着飾って「社交」をしに来ている客が多いが、ヨレヨレのパーカーを着て一人で来ているいかにもオタクみたいな人も散見され、そういうのを見かけると少し安心する。





  • 10/16/2022 Philippe Jordan / Camila Nylund / MPhil
    シューマン:交響曲第3番
    ワーグナー:『神々の黄昏』より抜粋

    シューマン目当てで行ったがワーグナーに圧倒された。このプログラムでケチってクワイア席・ホルンの真後ろに座ったのは流石に失敗だったが、ワーグナーチューバ一式を間近で観察できたのは面白かった(結構細い音がする)。アルミン・ジョルダンは録音で知っていたが息子も指揮者なのは知らなかった。


    ワーグナーチューバ。

  • 11/13/2022 Gustavo Gimeno / Beatrice Rana / MPhil
    ラフマニノフ:パガニーニ狂詩曲
    リムスキー・コルサコフ:シェヘラザード

    遅刻して前プロの現代音楽を聞き逃した。

  • 11/19/2022 Uwe Sochaczewsky / Münchener Internationales Orchester
    ファニー・ヘンゼル:序曲 ハ長調
    リリ・ブーランジェ:春の朝に
    シャミナード:フルート協奏曲
    ペヤチェヴィチ:交響曲

    留学生などが主体となってやっていると思しきアマチュア団体で、練習会場が職場の近くということで気になったので観に行った。女性作曲家にフォーカスしたプログラムで、序曲以外は正直手に余っている印象だったが、楽しそうで良かった。

  • 12/15/2022 Iván Fischer / Tabea Zimmermann / BRSO
    R. シュトラウス:『薔薇の騎士』よりワルツ
    ウォルトン:ヴィオラ協奏曲
    バルトーク:オーケストラのための協奏曲

    ツィマーマンがオケの方を向いて対話するように弾いていたのが印象的だった。ウォルトンのヴィオラ協奏曲は夜霧の中から現れてまた消えていくようなミステリアスな曲。バルトークは流石に十八番という感じで安定感があり、曲のユーモラスな部分がうまく活きていると感じた(と日記にメモしてある)。イヴァン・フィッシャーはソリストアンコールをセカンドの空いている席に座ってニコニコしながら聴いていて、おちゃめなおじさんという感じだった。

  • 12/18/2022 Titus Engel / Staatsoper
    フンパーディンク:『ヘンゼルとグレーテル』

    クリスマス恒例の子供向け演目ということでキッズに混じって楽しく観てきた。METのサブスクリプションで観たのと同じリチャード・ジョーンズの演出で、かなりグロテスクなテノールの魔女が良い。字幕がドイツ語オンリーだったが(たまにそういうことがある)、それでも全然楽しめた。

  • 12/31/2022 広上淳一 / 岩城宏之メモリアルオーケストラ
    ベートーヴェン:ウェリントンの勝利 交響曲第1-9番

    一時帰国中に上野まで聴きに行った。4番が良く、6番が一番眠かった。三枝成彰が前説で、『ウェリントンの勝利』は自分の発案でやってもらったが実演を聴いてみると駄曲だったみたいなことを言っていて笑ってしまった(実際しょうもなかった)。

  • 1/18/2023 Krzysztof Urbanski / Christiane Karg / MPhil
    マーラー:交響曲第4番
    ショスタコーヴィチ:交響曲第6番

    マーラーはハープの低音やフルートの重奏などの音響的な面白さが生だとよくわかって良く、また1・3楽章における急激な気分の変化みたいなのがうまく振り分けられていた(と日記にメモしてある)。こんな曲を全部暗譜で振るウルバンスキはすごい。

  • 2/3/2023 Simon Rattle / BRSO
    ワーグナー:『ジークフリート』

    イザールフィルハーモニーでの演奏会形式だったが、ミーメだけ鉄床がどうしても要るので小道具付きで登場したのがちょっと面白かった。やはりホルンソロが圧巻。ラトルは23−24シーズンからBRSOの首席指揮者に就任したのでよく登場しているが、あまり聴きに行けていない。

  • 2/26/2023 Lorenzo Viotti / MPhil
    マーラー:交響曲第6番

    やろうとしている極端なテンポ設定に対してコントロールがいまいちみたいな印象を受けたと思う。


    ハンマー。

  • 4/7/2023
    J. S. バッハ:ヨハネ受難曲

    ヨーロッパの復活祭にはそこかしこで受難曲がかかる。演奏と全く関係ないが、たまたま前の席にポスドク就活で応募したハーバードの教授が座っていたのでびっくりした。ちなみに2024年の復活祭がヨハネ受難曲初演300周年だったらしいが、今年は行かなかった。

  • 4/25/2023 Lothar Konigs / Staatsoper
    ウェーバー:『魔弾の射手』

    ドミトリー・チェルニコフによる演出で、クーノーは大企業の社長に、マックスはその一社員に読み替えられる。エンヒェンは夢の歌のところで歌詞に逆らってアガーテを裏切り、銀の弾丸がアガーテを間一髪で避けるのはマックスの妄想の出来事になっている。チェルニコフはヨーロッパのあちこちで演出を手掛けているようだけど、「読み替えをする」ということが自己目的化しているきらいがあり、露悪的である以上に作品の原テキストに対して意味のある批評的な角度を示せているとは正直思えなかった。そういう人は自分で脚本を書いて演劇をやってください。音楽は良かった。ドイツ語オペラを観に行くといつもケーニヒスが振っているのでそういう係の人なのだと思う。

  • 5/5/2023 Antonello Manacorda / Kirill Gerstein / BRSO
    シューベルト:交響曲第3・第6番
    ラヴェル:ピアノ協奏曲(ト長調・左手)

    シューベルトの前期交響曲はけっこう好きで、マナコルダは知らなかったけれどオケも含め楽しそうに演奏していてよかった。ピアノ協奏曲なのに中央最前列を取ってしまったので、ゲルシュタインの手元を見上げるようにして聴く形になった。同じ額を出すならいい席に座るより色々な公演に行きたいという気持ちでいつまで立ってもこういう席を取ってしまう。BRSOの本拠地であるヘラクレスザールはこのときが初。古代ギリシア風の壁画が両面に飾ってあるシューボックス型のホールで、レジデンツ宮殿内部に位置している。


    ヘラクレスザール(右)はレジデンツ宮殿の中庭(左)に面している。


  • 5/20/2023 Daniel Harding / BRSO
    マーラー:交響曲第7番

    とにかく変な曲だという印象。テナーホルンはワーグナーチューバより全然太い音がするというのが発見だった。それにしてもこうしてみるとマーラーのかかる頻度がすごい(MPhilにいたっては23−24シーズンに2回別の指揮者で4番をやっていた)。ちなみに行こうと思っていたMPhilの3番とStaatsoperの8番はチケットを取り逃した。

  • 6/8/2023 Johannes Debus / Staatsoper
    プーランク:『カルメル会修道女との対話 』

    引き続きチェルニコフによる演出で、修道女の処刑をカルト教団の集団自決に読み替えて、台無しにしている(どうもプーランクの相続人による訴訟沙汰にまでなったらしい)。『カルメル会』はト書き通りやっても現代で十分通用する強度のある作品だと思う。かなり好きな作品なので残念だった。

  • 6/10/2023 Mirga Graznite-Tyla / Staatsoper
    ヤナーチェク:『利口な女狐の物語』

    視覚的にカラフルでキラキラした舞台で、お遊戯会的な格好をした子役がわらわら出てきたりして楽しかった。音楽は「シンフォニエッタ」の明るいヤナーチェクという感じ。演出のバリー・コスキーは『マイスタージンガー』だけ映像で観たことがあり、それが自分が今まで見た中で一番優れたオペラの読み替え演出だったと思うのだが、『女狐』では割に穏当な演出をしていて、前々日観たチェルニコフの「とにかく何が何でも読み替える」という態度とのコントラストを感じる。

  • 7/21/2023: Lothar Koenigs / Staatsoper
    ワーグナー:『トリスタンとイゾルデ』

    7月いっぱいかけてシーズンの演目を再放送する形でやっているミュンヘン・オペラ・フェスティバルの公演で、日本から遊びに来た妻と観に行った(このときばかりはさすがにいい席で観た)。演奏が良いのもさることながら、演技によって話にものすごく説得力が出ているのに驚かされた(話が思弁的で、演奏会形式でやってしまったりしがちな作品であるだけに尚更)。たとえばクルヴェナールが瀕死のトリスタンを気遣ってあたふたしている3幕1場のシーンなどが印象に残った。ワリコフスキの演出は、トリスタンとイゾルデのダブルを黙役で置くなど、深読みできそうな仕掛けを作りつつ、総じて元の話を逸脱しない舞台づくりになっていて、何か新しいものを観たいという層とコンサバティブな層どちらにもウケそうな微妙なラインを狙っている(悪く言えば折衷的)という感じがした。

    バイエルンは、国王ルードヴィヒ2世がワーグナーのパトロンだったことでワーグナーと縁が深い。ルードヴィヒ2世は、政治そっちのけでメルヘン趣味に耽溺した「狂王」として有名で、例えばドイツ有数の観光スポットであるノイシュヴァンシュタイン城は、彼が中世騎士ごっこをするためだけに19世紀末に(コンクリ造りで!)建てさせたいわば究極の”おたく部屋”である。各部屋の壁には、『トリスタン』や『パルジファル』など、ワーグナー作品の場面を描いた壁画が描かれている他、城内には人工洞窟が作られており、ここでルードヴィヒ2世はローエングリンごっこに興じていたらしい。

    8月に遊びに来た両親の強い希望でノイシュヴァンシュタイン城に行ってきたが、ノイシュヴァンシュタイン城が中世の城でないことは案の定誰も知らなかった。

    ちなみにルードヴィヒ2世は政治への無関心・浪費癖から政府によって廃位にされ、最終的にお付きの精神科医でミュンヘン大学教授だったグッデン博士とともに湖で水死体となっているところを発見されたらしい。めちゃくちゃ脱線だが、自分が現在魚で研究している脳の部位は、このグッデン博士によって発見されたことでその名前を冠している(グッデンの背側被蓋核)。せっかくなので先日、東墓地(Ostfriedhof)にあるグッデン博士のお墓も見てきた。


  • 7/22/2023: Arena di Verona
    ロッシーニ:『セビリアの理髪師』

    アレーナでの屋外オペラ。観光イベント的側面が強く、客より後に楽器ケースを持った奏者がゾロゾロ入ってきたりしていて、そこにかえってプロフェッショナルを感じたりもした。屋外にしては音響がいいとはいえ、歌手の声量は本当にすごいと思わされる。総じて楽しいエンターテインメントだった。演奏と関係ないが、地元のキッズと思しき飲み物の売り子の「ヴィノ・ロッソ!ヴィノ・ビアンコ!ビッラ!アグア!コカ・コーラ!」の掛け声が印象に残った。野球場のビール売りのバイトみたいなものですね。



  • 8/3/2023: Carlo M. Barile (Organ)
    トラバーチ:トッカータ、フーガ他
    フレスコバルディ:アルカデルトのマドリガル『耐え難い苦痛が私を殺す』によるパッサジャート
    フローベルガー:トッカータ4番
    ケルル:パッサカリア
    ムファット:シャコンヌ
    J. S. バッハ:フーガ ロ短調 前奏曲とフーガ ホ短調

    8月いっぱいミュンヘンのプロテスタント教会が共同で行っているオルガンフェスティバルの一環で、ピナコテーク近くの聖マルコ教会で聴いてきた。この夜は「トラバーチからバッハまで」と銘打ったコンサートで、特にトラバーチ作品の近代的な機能和声以前の響きが印象に残った。それにしても、「バッハからXXまで」というコンセプトのコンサートはよく見かけるが、「バッハまで」というのはすごい。聖マルコ教会はカール・リヒターがオルガニストをやっていたことがあるらしい。

  • 8/4/2023: Pernadetta Sunavska (Organ)
    フランツ・シュミット:前奏曲とフーガ イ長調
    ショスタコーヴィチ:前奏曲とフーガ ニ短調
    ストラヴィンスキー:『ペトルーシュカ』からの3楽章
    ショスタコーヴィチ:前奏曲とフーガ ロ短調
    フランツ・シュミット:トッカータ ト長調

    2日続けてのオルガンコンサートだが、こちらは前日と打って変わって曲芸的なプログラムで、ストラヴィンスキーのあまりの不協和音に耳をふさいでいるおばあちゃんがいたのには笑ってしまった。さすがにオルガンを意図して書かれているシュミット作品が一番良かった。会場はゼンドリンガー門近くの聖マタイ教会。この夏は観光案内をふくめかなりの数の教会を訪問した。カトリック教会のオルガンもそのうち聴きに行きたい。

  • 9/7/2023: Mirga Grazinyte-Tyla / MPhil
    マーラー:交響曲第2番

    MPhilのシーズンオープナー。『女狐』も聴いたグラジニーテ=ティーラはきびきびと統率の取れた指揮で非常に良かった。「ティーラ」は「静寂」を意味するリトアニア語を芸名として自分でつけたらしい(能力バトル漫画?)。

  • 10/7/2023: Andrew Manze / MPhil
    ボリソワ=オラス:アンゲルス
    サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番
    フォーレ:レクイエム

    「アンゲルス」はミュンヘン市からの委嘱作品で、教会の鐘の音を取り入れているということらしい。

  • 10/19/203: Lothar Koenigs / Staatsoper
    ワーグナー:『さまよえるオランダ人』

    夏の『トリスタン』と同じワリコフスキ演出で、1・3幕はト書き通りなのに2幕の舞台だけフィットネスジムになっていて、女たちが原色のトレーニングウェアを着ているという不思議な舞台構成になっている。音楽は良かったが、「ゼンタが最初から伝説の幽霊船長を慕っている」という根本的な設定の部分がとにかく腑に落ちない。

  • 11/12/2023: Members of MPhil
    ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲第2番
    フランク:ピアノ五重奏曲

    11月から週1でピアノのレッスンに通うようになったので、人がピアノを弾いているのを見に行きたくなって行った。人から習って真面目に楽器を練習するのは実に10年ぶり。会場はキュンストラーハウス。

  • 11/17/2023: David Afkham / Christian Tetzlaff / BRSO
    ウェーベルン:パッサカリア
    ベルク:ヴァイオリン協奏曲
    フランツ・シュミット:交響曲第4番

    このときちょうどヴェデキントのルル二部作を読んでいたので、ベルク目当てにチケットを取ったが、シュミットの交響曲が予想外に良かった。後期シューベルト・ブルックナー風の、エピソード羅列的な・ゆったりした時間感覚の作りで、過去への悲痛な憧憬が感じられる曲だった。それはさておき平日の夜にこのプログラムでホールが埋まるのがすごい。

  • 11/26/2023: Vladimir Jurowski / Staatsoper
    ベルク:『ヴォツェック』

    引き続きのベルク。東京でもやっているクリーゲンブルク演出の舞台が陰気で良かった。音楽監督のユロフスキをこの公演で初めて見た。

  • 12/9/2023: Manfred Honeck / Kirill Gerstein / MPhil
    バルトーク:ピアノ協奏曲第3番
    ドヴォルザーク:交響曲第6番

    ピアノレッスンでバルトークの「子供のために」をやっていた関係でバルトーク目当てに行ったが、また間違えてクワイア席に座った結果ピアノが全然聴こえなかった。体調不良のポペルカの代役だったホーネックは、昔ベルリンでDSOとのベートーヴェン7番を聴いていたく感動したのだが、ドヴォルザークは好みよりややタイトすぎたかもしれない。予定ではガランタ舞曲もプログラムに入っていたのだが、レパートリーになかったのかなくなっていた。

  • 12/19/2023: Simon Rattle / BRSO
    モーツァルト:『イドメネオ』

    ヘラクレスザールでの演奏会形式。ピアノレッスンでモーツァルトのソナタ16番をやっていた関係でモーツァルトが聴きたくなり、直前に立見席を取って聴きに行った(しんどかった)。イドメネオは初めて聴いたが、レチタティーヴォの作りとかを面白く聴いた。話の筋に全然絡んでこない”負けヒロイン”的立ち位置のエレクトラが妙にいいアリアをもらっているのもちょっと面白かった。


    最後列からの立ち見。

  • 12/21/2023: Lothar Koenigs / Staatsoper
    モーツァルト:『魔笛』

    22年末の『ヘンゼル』に引き続き、年末のファミリー向け公演という趣で、周囲をキッズに囲まれながら観てきた。『魔笛』はテキストの価値観的に、今日日「素」でやるにはどうなの?と(自分は)思ってしまう作品なので、普段読み替えばかりやっているStaatsoperがト書き通りやっているのには少し驚いた。それはそれとして、大蛇が爆発したり、童子がワイヤーアクションで飛んだり、パパゲーナの子どもたち(子役)がわらわら登場したりと、舞台がとにかく豪華で、エンタメとして楽しかった。

  • 12/25/2023: さくら弦楽四重奏団
    バルトーク:弦楽四重奏第6番
    シューベルト:弦楽四重奏第14番
    ベートーヴェン:大フーガ

  • 1/19/2024: Simone Young / BRSO
    ブラームス:交響曲第3番 第4番

    2023年の年始に、ブロムシュテットがBRSOとブルックナーをやっている公演があり、聴けるうちに…と一時帰国から戻ってくる日の晩のチケットを無理して取ったのだが、フライトで疲れすぎて結局行かなかったということがあった。2024年の年始はブロムシュテットがBRSOとブラームスチクルスをやるということで、今度こそと思いチケットを取ったら、こんどはブロムシュテットが体調不良で代役になってしまった。シモーヌ・ヤングはあまり聴いたことがなかったが、グルグル踊って振るので観ていて面白かったのと、独特な細かいルバートを使ってピアノのフェルマータのようなところを聴かせるのがうまく、とくに中間楽章が印象に残った。ブロムシュテットは最近指揮台に復帰しているようなのでそのうち聴きに行きたい。

  • 1/30/2024: Antonino Fogliani / Staatsoper
    ドニゼッティ:『ランメルモールのルチア』

    ドイツオペラばかり観ていたのでたまにはと思い観に行った。ルチアのいわゆる狂乱の場が見せ場の作品だと思うが、ルチアとエンリーコの間で板挟みになるライムンドの苦渋にいちばんリアルな感情を感じた。舞台装置は趣味が良いが場の変化が見立てだけで進むのでちょっと変化に乏しく感じられた。

  • 2/9/2024: Semyon Bychkov / Mao Fujita / BRSO
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    シューベルト:交響曲第9番

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  • 2/25/2024: Emmanuel Villaume / Staatsoper
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    会場のキュビエ劇場はレジデンツ宮殿内部にある。

今後は半年に一度くらいまとめを書いていきたい。

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