米・日・独と住処を変えつつ、かれこれ8年以上自炊をしている。
渡米当初はジャポニカ米(いわゆるスシ・ライス)を炊いて肉じゃがを作ったりしていたのだが、手に入りやすい食材のプールが違いすぎて日本語のレシピはあまり役に立たず(特に薄い肉がない)、最終的には現地でよく食べられているものをエミュレートするのが一番安上がりかつ旨いという結論に至った。
すしライス
渡米半年、2018年2月の献立。肉じゃが、キャベツの味噌汁、サラダ、ご飯。
アメリカ時代終盤によくやっていた肉と野菜のロースト。具材をオーブンに放置するだけで完成するので手間がかからず楽(2021年10月)。
博論を書きながら焼いたパン。パンを買うより小麦粉を買うほうが日持ちがする(2022年4月)。
- オイルサーディンのパスタ
- (いわゆるスパイス)カレーかビリヤニ
- 茹でたソーセージ+ザワークラウト+カルトッフェル・クヌーデル
という献立をローテーションしているのだが、これだといまいちドイツの食材を有効活用できている気がしない(3はほとんど出来合いのものを温めているだけなので)。残念ながら今の家はオーブンがないので前のようにローストもできない。
そこでここ数ヶ月ハマっているのが肉の煮込み料理である。煮込み料理というのは色々あるが、基本的には香味野菜を炒めるなどしてダシの元をつくり、そこに肉と液体を加えて煮、塩などで味を整えるという構造を取る。フランス料理(ビフ・ブルギニョン)であれば香味野菜が根セロリ・エシャロット・人参、液体が赤ワインになり、ドイツ料理では根セロリ・リーキ・人参・玉ねぎということになる。香味野菜を玉ねぎ・トマト(とクミン・カルダモン)、液体を生クリームなどとするとカレーになる。『料理の四面体』の話ですね。
ドイツのスーパーではこの根セロリ・リーキ・人参がスープ野菜セット(Suppengrün)として2ユーロぐらいで必ず売っている。煮込み向きの硬い牛肉(すね肉 Beinscheiben・尻肉 Tafelspitz)もだいたい100g 1ユーロ強の安値で売られている。これらの肉は脂も少なく最低1時間半は煮ないといけないが、煮ると結合組織が溶け出してホロホロになってうまい。調理は時間が掛かるが、ほとんどは放っておくだけなので思ったほどの手間ではない。職場の食堂がまずく、平日の昼食を持参しないといけないので、日曜に数食分仕込んであまりを弁当に転用できる煮込みをビリヤニと並んでけっこう重宝している。
ときに先日、思いつきでクランベリーを買って持て余していたのだが、クランベリーソースを使う料理といえばスヴィチュコヴァーである。スヴィチュコヴァーというのはチェコの煮込み料理で、根菜ベースのソースに浸かった肉に、生クリームとクランベリーのジャムがついて出てくる(そして付け合せにチェコ版のクヌーデルであるクネドリーキというでかい麩のようなものがつく)。高校生の時家族旅行でプラハを訪れた際にこれを初めて食べて、当時は肉にジャムという組み合わせにギョッとしたのだが、2018年始と2023年の夏にプラハを再訪したときには美味しくいただくことができた。というわけでクランベリーを消費するためにスヴィチュコヴァーを作ることにした。
去年の夏プラハで食べたスヴィチュコヴァー。白いやつがクネドリーキ。
まずスヴィチュコヴァーの香味野菜には玉ねぎ・人参・根セロリとならんでパースニップが入ってくるということが日本チェコ友好協会のサイトに書いてある。パースニップというのは白い人参のような見た目をした人参に近縁の根菜で、人参より甘く独特の香りがある。アメリカではよくローストにして食べていたのだが煮込みにするのは初めて。
左からパースニップ、人参、根セロリ、玉ねぎ。いずれもキロ1ユーロ半以下ぐらい。
すべてをみじん切りにしバターで炒める。塩と砂糖で浸透圧を与えメイラード反応を促進する。本来はソースをピューレ状にするらしいがブレンダーがないのでみじん切りを頑張ることによって替える。調理の構造さえあっていればこのへんは些事である。
全てが茶色くなったらバラバラにした肉と水を投入し、沸騰したら弱火にして1時間半待つ。肉はスネの断面みたいなやつ(Beinscheiben)をひとかたまり(550g)、100g 1ユーロで買ってきた。骨の髄は煮ると溶ける。
肉がフォークで切れるくらい柔らかくなっていることを確認し、生クリームとレモンのスライスを投入、塩と砂糖で調味する。計量はカンでやる。
最後に前日作っておいたクランベリーソース(生のクランベリーを体積比1/3ずつの水と砂糖・レモンスライスと煮ただけのもの)を添えていただく。クネドリーキは省略。
正直そんなに期待していなかったのだが、記憶の中のスヴィチュコヴァーとかなり同じ味がして驚いた。ただ酸味で中和されているもののクリームの重さはかなり胃にずっしり来るので、このへんは牛乳で代替するなど含めもう少し加減したほうが良いかもしれないと思った。
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